COLUMN

2004.06.01中間 真一

いまどきの若者たちを甘く見るな-会社のダブル・スタンダードが危ない-

 「若者」をテーマとしたプロジェクトは、シニア、ミドルのプロジェクト以上に新たな大きな発見が多かった。今の20代の若者たちが、既存の大人の組織、大人の社会に対して抱いている、期待、価値、信頼が、予想をはるかに下回る低さだったこともその一つだ。これは、現在の大人社会が自ら招いてしまった危機的問題だ。

 「いまどきの若者は、フリーター、第二新卒、パラサイトだの、とにかく脆弱で厳しい現実社会の中で生きていく力が不足していて困ったもんだ」というのが世間の一般論だ。しょうがないから、キャリアカウンセリングだの、インターンシップだの、職業能力認証制度だの、若者の自立支援をしてやろうと、取り組まれている。しかし、どれもパッとした成果をあげていない。なぜか?問題の設定に間違いがあるからではなかろうか。

 今回のプロジェクトを通じて、多くの若者たちの話しを聞き、アンケート調査の結果も眺めた。彼らの一つの共通点は「自分」が先ずあり、それを活かせる場を世の中に求めているということだ。そのために、ある者は場の選択範囲をグローバルに広げ、ある者はフリーランスの生き方を選ぶ。確固たる場が見つからないが、「自分をあきらめて就職するよりもフリーターの方がマシ」という連中もたくさんいた。「自分を活かす場としての大きな会社」と言う人物になかんか巡り会わなかった。

 しかし、彼らの就職活動は、依然として活況を呈している。誰が、どんなつもりで会社に就職しているのだろう。どうも、「自分を活かす場として、この会社に就職しよう」という学生比率は、会社の規模が大きくなるほど低下しているようなのだ。フリーターでは格好悪いから「とりあえず」就職、どうせなら、次のステップに無駄にならないキャリアパスとしての就職、なんだか、飲み屋に入っての「とりあえず生ビール」(味わうというよりも、喉ごしの旨さ)に似た就職のようなのだ。

 彼らを迎えている会社は、それを承知しきれているだろうか。巧妙にダブル・スタンダードを駆使して彼らを操れていると思ったら大間違いということはないだろうか。少なくとも、彼らは会社のダブル・スタンダードを、父親をみながら、バイトをしながら、先輩に聞きながら、かなり見抜いていることは確かだ。多様な人材が必要だと言うけれど、いまの会社なんて、必要なもの以外は吹き飛ばす「遠心分離器」みたいなものだと思っている。そんなところに、自分をかけたくないのは当然だ。だから、彼らは会社のダブル・スタンダードに対して、自らもダブル・スタンダードで臨んでいる。遠心分離器にかけられているフリをしつつ、目敏く安全地帯を見つけて「あっかんべー」をしている連中も少なくない。

 会社も若手も互いに「タテマエ」で対面している組織、こんなに危ういものは無い。これでそんな会社がつぶれて、新陳代謝が進めばよいという見方もあるだろう。しかし、そんな暢気な状況でもない。これまで、確かに中高年問題ばかりに気が向き、遠心分離に熱中してきた日本の会社。そろそろ、強力な磁場をつくって求心力を高めるために会社の「核開発」に目を向けなければ、たいへんなことになりそうだ。いまどきの若者たちは、明らかにエゴも甘えも強い。しかし、そんな豊かな社会の申し子たちを生んだ責任を、マジメにホンネで考え、取り組まなくてはならない。彼らを甘く見過ぎると、手痛いしっぺ返しが、なんとミドルに降ってきそうなのだから。
(中間 真一)
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