COLUMN

2013.02.15内藤 真紀

share globally, act locally

昨日は2月14日、バレンタインデー。バレンタインシーズンのチョコレート販売額は、年間販売額の1割以上を占めるという。購入量もさることながら、愛情や感謝を伝える機会ということで、少し値のはる商品でもつい買ってしまうのだろう。バレンタインには、贈る側ももらう側も幸せな気分になる、そんなイメージがある。
 
その幸福感を分かち合おうというわけか、寄付付き商品も販売されたようだ。原材料であるカカオの産地では貧困や児童労働が深刻な社会問題になっており、地域の子どもたちの教育支援や食生活改善に商品代金の一部が使われる。消費を通じて原産国の子どもたちを支援する活動に参加でき、子どもたちと幸せを分け合える仕組みである。
そう言えば、クリスマスシーズンにも同様の仕組みを目にした。1片を切り取ったクリスマスケーキを通常価格で購入することにより、1片分の金額が途上国支援活動に寄付される。1片分がすでに切り取られたホールケーキは見た目にインパクトがあり、あたかもそこにいない誰かとケーキを共有しているかのようで想像力がかきたてられる。
「役割」「参加」「分け合う」「共有する」「分担する」などの意味が「share」にはある。シェアと言えばワークシェア、カーシェア、シェアハウス等が聞かれるが、自分のできることを通じて誰かの役に立つ活動に参加するような「シェア」も、寄付付き商品の普及とともに今後広がっていきそうだ。
 
先のチョコレートやケーキの例では、寄付金は途上国支援のNGOやNPOに集まる仕組みになっているが、NGOやNPOはシェアを推進する能力がとても高い。昨年末に国内の事業型NPO数団体に話をうかがう機会を得たが、シェアを推進している点は、各団体に共通する特徴だった。大部分のNPOに言えることだが、取材先の団体もスタッフの数は少なく、十数人が中心だ。小規模な体制で、各団体独自の活動領域に関連する多くのプロジェクトを推進している。活動を成り立たせているのが、人・モノ・資金・ノウハウを外部から得るシェア推進力なのである。
 
たとえば、その道の実務家や学識経験者をプロジェクトの講師やアドバイザーとして活用したり、インターンやボランティアにプロジェクトの運営支援を任せたり。資金は官庁・行政や企業の補助金や事業委託費、助成金、国内外からの寄付金など。そのほか研究機関や大学等との連携にも積極的だ。組織内で閉じずに、多様な関与者とネットワークすることにより、事業活動を進めミッションの実現に邁進している。
多数の関与者や資金がNPOに集まってくるのはなぜか。その団体の課題設定や将来ありたい姿、活動内容の意義や有効性に共感、賛同、信頼し、自分も協力したいと思うのだろう。団体自ら広報しなくても、メディアの取材や協力者の紹介などで関与者の輪は徐々に拡大しているそうである。
また各団体は、組織のミッション実現に向けシェアを進める一方で、同様のミッションをもった各地の活動団体に対し積極的に情報やノウハウ、ネットワークを提供し共有している。ノウハウと資金源があるなら自ら各地で事業を展開すればよいのにと思ってしまうが、課題は地域固有なものであり、地域に根ざした力のある組織がそれぞれ地元で自律的に取り組むのがあるべき姿なのだろう。
 
ある地域の特定の課題を解決する活動に、思いをもった人たちが自分のできることで参画する。その経験がさらに別の地域の取組みに活用される。取材先のNPOでは、市場占有率ではなく役割を分担し喜びや学びを分かち合う意味のシェアが展開されていた。さまざまなものが交じり合い環境に応じて変化していくなかで、イノベーションも生まれるのではないかと思う。
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