COLUMN

2016.10.01戸田 貴

「宇宙」に広がる可能性と「地球」の現実

 最近あるテレビ番組で卓球の福原愛さんが結婚された相手へのサプライズプレゼントとして「月の土地」を買ってあげたとコメントしていた。「月の土地」は買えるのか?誰もがそう思っただろう。番組の説明によると、月の土地の権利を取得した米国企業ルナエンバシー社が「地球外不動産業」を営んでおり、そこから購入できるのだとか。早速ウェブサイトを検索してみると3,000円で1200坪の土地が購入可能、権利書が送られてくるそうだ。月に自分の土地を持つということに余り現実味はないかもしれないが、夢見ることができるので自分だけでなく身近な人へのプレゼントにするなど、結構人気があるらしい。


 また、つい先日、NASA(米航空宇宙局)が画像分析した木星の衛星エウロパについて、「驚くべき発表を行う」というアナウンスをしたことにより、ネット上では"ついに地球外生命体が見つかったか"と大騒ぎになっていた。エウロパは氷で覆われた地表の下に海(水)があるらしく、以前より生命体存在の可能性が取り沙汰されていた。残念ながら今回の発表は、高さ200kmの水が噴出する「水柱」発見との内容であったが、それでも、この発見でさらに生命体存在の可能性が高まったらしい。

 なぜこれらの話題を取り上げたのかというと、昔から誰もが、遠い「宇宙」に関して、夢やロマン、興味を抱き続けているのが分かるからだ。アポロ11号の人類初の月面着陸に始まり、NASAを中心とする世界中の宇宙機関は競いながらロケットを打ち上げ、いくつもの神秘のベールをはいでいった。宇宙の謎を解明したいという欲求が、今後も科学技術の進化をより一層早めていくのだろう。日経BP社「メガトレンド2016-2025」の未来予測によると、2030年を過ぎたあたりから月面に有人基地が出来て、民間宇宙旅行がスタート、火星には有人探査船が送られる、とあった。地球上のAIやロボット同様、宇宙関連の科学技術も私たちの想定を超える速さで、謎を解き明かしてくれるかもしれない。
 
 その中でも最大の関心事は、先の話題にも出した「地球外生命体」の発見だろう。まだ解明されていないが本当に他の星に存在するのか、どのような生き物なのか、知的生命体もいるのだろうか等々、非常に興味深い。そして、もし生命体が存在する星ならば、地球人も普通に住むことが出来る環境を構築できるかもしれない。将来もし地球に何らかの避けられないリスクが発生し、人類滅亡の危機に瀕した際にその星に移住するという映画やSF小説みたいなことも現実的になるかもしれない。現に最近映画にもなった火星への移住については、既に無人探査プロジェクトを開始したNASAを含め各国が本気で考えている模様だ。今世紀に生まれた人なら条件さえ揃えば生きている間に火星で生活することも夢ではない。

 「宇宙」については、まだ解き明かされていないことが多い分、人々に夢やロマン、ワクワク感を与え、将来的に人類の救いとなる可能性もあるのは分かった。ただ、忘れてならないのは、この「地球」だ。46億年前に誕生し、私たちは祖先からこれまでずっと恩恵を受けて住ませてもらいながら、近代工業化時代以降、資源を使えるだけ使い、長きにわたる環境破壊で地球温暖化を進め、気候変動が動植物や土地・水に多大な悪影響を与えている。このまま何もせず手をこまねいていたら巨大隕石が落ちて人類が滅亡するよりもずっと高い確率で地球は崩壊してしまうだろう。そうならないためにも、現在CO2排出量の多い国が続々批准し、その発効が目前のパリ協定(地球温暖化対策の新たな国際枠組み。20年以降の自主的な削減目標を示し、世界全体で産業革命前と比べた気温の上昇を2度未満に抑えることが目標)等、グローバル各国が真剣にこの社会課題に取り組むしくみや制度、そして何より私たち一人ひとりが意識して温暖化を抑えるための行動をとることが必要なのだ。

 子供の頃にみたアニメでは自分達の惑星の寿命が近づいたので、艦隊を率いて地球を侵略し、移住しようとした異星人がいたが、地球はまだ寿命が尽きた訳ではない。散々使って調子悪くなったから別の星に移住してしまえばいい・・・というのは少々虫がよすぎる話である。将来的には他の星に移住するということもあるかもしれない。だが、その前に、人と「地球」が共生していくために自分達が今何をすべきか、現実を考えることこそ大事なのではないだろうか。
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