COLUMN

2017.02.01戸田 貴

過去に固執せず未来に希望を

今回のコラムでは、はじめにHRIから一点お知らせをさせていただきます。こちらをご覧いただいている皆様は既にご存じの通り、先月からHRIのウェブサイトを一部リニューアルしました。最新研究テーマの紹介と同時に、デザインを一新、大変遅ればせながら、PC・スマホ・タブレットどれでも綺麗に見られるレスポンシブルWebデザイン化も行いました。また、コンテンツとして毎月更新の「研究員コラム」に加え、不定期になりますが、「HRI×フロンティア」と題し、研究員が各分野の最先端で活躍されているフロンティアの方々にインタビューした内容を掲載するコーナーも設けました。今後ともHRIサイトへご来訪いただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

※以下よりコラムとなります。

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最近、あの時××していたら、もし××していれば、ばかり考えてしまうアラサー女性が主人公のコミックがドラマ化された。この「タラレバ」は、年代を問わず誰もが考えてしまうことであり、私もあの時決断をしていたら今とは異なる人生を歩んでいたに違いない、と悔しく思うターニングポイントがいくつかある。「わが生涯に一片の悔いなし」と言い切って人生を全うできる人など稀有な存在ではないだろうか。

では、過去に戻ってその時点の自分にこうした方がよい、とアドバイスできるとしたらどうだろう(これもタラレバだが)。将来AIが人間の技術より上回るとされる「シンギュラリティ」(技術的特異点)が訪れる2045年頃なら、技術進歩でタイムマシンに近い装置が開発されおり、タイムトラベルが出来るかもしれない。

調べてみると、理論上ではあるが未来への片道切符のタイムトラベルなら出来ないことはないようだ。アインシュタインの相対性理論では、「全ての物質が光より速く移動できず、物質は光速に近くなると質量が増加して時間の流れが遅くなる」とされており、このことから、たとえば光に近いスピードで宇宙旅行をして地球に戻ると、宇宙船に乗っている1年が、地球上の10年や20年、それ以上の時間が進んでいることになる。乗船していた彼らにとっては未来にタイムスリップをしていることになるのだ(ウラシマ効果)。宇宙物理学の佐藤勝彦東京大学名誉教授によると、実際、新幹線に乗って東京から博多まで1200キロを移動すると、10 億分の1秒だけ未来に行っているらしい。ただ、あくまでも片道切符であり、往復して過去に戻ることは出来ない。

肝心の過去へ戻ることも可能なのか?答えは今のところ余り期待できないようだ。条件とされる光よりも更に速く移動することは難しく、また物理学者の中には「ワームホール」(タイムトンネル)という時空の2点間をつなぐ宇宙の極小さなトンネルを拡張し、光速移動することで過去に戻る研究を進めているが、たとえそれが完成しても、物理学者のスティーヴン・ホーキング博士は、過去へのタイムトラベルで矛盾が生じる「タイム・パラドックス」で因果律(原因の後に結果が生じる法則)が破綻し、宇宙全体が混乱するため「何らかの抑止力が働くはず」とみている。簡単にいうと、もし今の自分が過去に行って過去の自分を殺したら、今の自分は死んで存在しないはずなのに一体誰が・・・という矛盾だ。残念ではあるが、過去へのタイムトラベルは、今後数十年経っても余程大きなブレークスルーがない限り、極めて期待薄のように思える。

やはり今を生きる私たちは、悔やみきれない過去があっても、過去は過去として心の引出しにしまって、この先出来る限り後悔をしないよう、毎日しっかり生きていきなさいということかもしれない。過去に戻ってなんとか挽回しよう等と考えてしまった自身への戒めとしても記しておく。

ただ、未来についてはもっと考えてもよいのかもしれない。超高齢化社会の到来、その一方子供の数は減少し景気が悪化、財政は破綻、地球温暖化が進むことで日々の生活にも影響を与える等、極めて暗い未来予測がされている今、なるようにしかならないと諦めず、今から何が出来るか、何をすれば良いかを前向きに考えて、明るい未来を拓くための希望を持つべきではないだろうか。そのためには人間の力だけではなく、機械でもAIでも役立つものは何でも活用していけばよいと思う。孫や曾孫、非曾孫が笑顔で楽しく生活している未来の社会をつくるために。

この先、タイムマシンで過去や未来へ自由に行き来できる時代が訪れるかは現時点で全く分からないが、私たちヒューマンルネッサンス研究所では、未来の社会や生活を想定し、その時にどのような課題やニーズが生まれてくるのか、それらをどのように解決すればよいのか、希望ある未来のために引き続き研究をしていきたいと思う。
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