COLUMN

2009.01.01中間 真一

やればできる、と思えばできるChange has come to our world!

新年明けましておめでとうございます。本年四月からは、執筆陣も更新頻度も増し、さらに幅広く社会や生活の中の兆しをとりあげ、みなさんと共に未来を考える契機の充実を図っていきたいと思っています。
 時代の変化は、誰もが身近に感じられるものとなってきました。これまでの「あたりまえ」がガラガラ崩れ始めることは、誰にとっても不安です。しかし、変化は機会です。それを想う時、バラク・オバマ氏が勝利を収めた昨年のアメリカ合衆国大統領選は、まさに象徴的なドラマとして思い返せます。

 ほぼ一年前の昨年一月八日、予備選の幕開けとなるアイオワで幸先良い勝利を収めて一気に波に乗ろうとしたバラク・オバマ氏が、次のニュー・ハンプシャー州でヒラリー・クリントンに僅差で敗れました。その後のオバマの希望へのスピーチは、まさに人々の心をとらえ、日本国民の私にさえ、感動的に受けとめられるものでした。そうです、あの"Yes, we can!"です。敗れた候補のスピーチが、あれほど人々の心を奮い立たせたことは、これまでにあったのでしょうか?そしてあれから一年、今月20日には第44代アメリカ合衆国大統領に就任するわけです。ここで、その一部分を和訳してみます。

「希望を訝しがる人たちからは、そんな改革はできっこないと言われた。現実は厳しいのだから、人々に誤った希望など与えるなと言われた。でも、このアメリカに間違った希望なんて、これまで一度も無かった。私たちは困難に出会った時、どの世代のアメリカ人も、このシンプルな信条を忘れずに立ち向かってきたのだ。
"Yes, we can!"
アメリカ建国の父たちも、そう宣言していた。自由を求めた奴隷たちも、そう囁き合っていた。移民たちも同じように唱え、労働者たちも女性達も唱えてきた。月世界に新たなフロンティアを求めた大統領も、平等と公正の約束の地に導いてくれたキング牧師も同じことを唱えてきたではないか。
"Yes, we can!"」

 そして、オバマ氏のもう一つのフレーズは、"Change has come!"です。マスコミでは、盛んにオバマ候補のレトリックやイメージ戦略の優れた点を強調しました。確かに、それもあるでしょう。しかし私は、それだけではないように感じています。彼のスピーチからは、しっかりと現実の地べたを踏まえて、天に向かって高い希望を目指そうとする、演出だけではない「真心」が伝わってくるような気がするのです。空疎な感じがしないのです。

 私は、この二つのメッセージは、アメリカのみならず今の日本、世界に求められているように感じてしまいます。昨年後半から、京都商工会議所の「知恵産業研究会」メンバーとして、知恵と行動力にあふれる素晴らしい京都の経営者の方々から、直接お話を伺う機会を得てきました。そこで感じてきた共通点にも、まさに通じているのです。このシンプルな信条こそ、不安な時代の針路ではないでしょうか。

 アメリカの大統領や、優れた経営者の話となると、「ちょっと、自分には及ばない遠い世界の話しだな」と感じてしまうかもしれません。しかし、私は思い出します。HRIが子ども研究の原点の場として協力してもらっている風の谷幼稚園の年長組の園児が、恒例のかるた作りで読み札として書いた『やればできると思えばできる』というメッセージを。五歳の子どもでも、いや、五歳の子どもだから、未来に向かっていこうとする気持ちが素直に伝わってきます。五歳の子ども、四十七歳のオバマ氏、そのスピーチライターはなんと二十六歳だそうです。素直に未来を仰ぎ、これまでの社会の惰性や懐古主義に頼ることなく、自分たちのハッピーな人生を獲得しようとする人たちです。これまで、なんとなく乗っかっていられた「共通前提」は、もはや取り戻せないでしょう。変化は、既に私たちの世界に到来しました。新たな共通前提は「自律」かもしれません。自立した個人が、周囲の違いのある人々を承認し合いながら、希望に向けて歩んでいく社会、「自律社会」へのステップこそ、この不安の向こう側の希望への針路ではないでしょうか。決して気楽な年ではないでしょうが、お正月ということで、お屠蘇気分でちょっと大きなことを言ってみました。
(中間 真一)
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