MONOLOGUE

2021.08.27

未来を考えるための生活時間


 人の生活を考えるっていうのは、突き詰めていくと「時間」、「空間」、「価値観」の、3つの「かん」にたどり着くんじゃないだろうかと思っています。どうでしょうか?

 これら3つについて、最近、思うところがあったので、ぶつぶつ独り言を記します。まず手始めに今回は、生活の「時間」の話しです。

 総務省統計局が、「社会生活基本調査」という調査を1976 年以来、5年毎に実施しています。この調査では、日本人の生活時間の特徴がわかって、とてもおもしろいんです。この結果を考察した「40年間の生活の変化を時間で見る~社会生活基本調査の結果から~」というレポートが、ちょうど今日、ウェブサイトに掲載されていました。40年というのは、調査開始の1976年と、5年前実施の2016年(コロナ前)との比較です。

 私たちの、一日平均の生活時間の変化量は、40年を経たとはいえ、そうそう劇的には変化しているわけではありません。しかし、日本人の一年間の平均値として出される変化時間は、たとえ数分間であっても、大きな意味をもの語っていると思います。

 40年間で最も増えたのは、ちょっと意外でしたが「休養・くつろぎ」で+39分。二番目が「身の周りの用事」(トイレ、入浴、着替え、身支度など)で+22分です。やはり、イケイケの70年代半ばの勢いからすると、今はマイペースで、自分を大事にするということの表れかと感じます。

 一方、最も減ったのは、「睡眠」-28分、次が「家事」-20分です。こうして見ると、増えたのは「生活のリセット時間」です。減ったのは「生活に必須な時間」にも見えます。必須な時間を最小限にして、生活の楽しみを最大化するという、コスパとか言っている「パフォーマンス志向」と言えるかもしれません。ムダだらけの生き方をしている私としては、「時短料理」とか、「お値段以上」とか、何でもパフォーマンスで考える向きには、どうも馴染めないのですが、それは幸か不幸か、私が平均的な生活者ではないということなのでしょう。少なくとも、サラリーマンとして、それは確かです(笑)。

 このレポートの、性別、年代別の生活時間の変化で、私が最もおもしろかったのは「買物」時間でした。性別、年齢別、みなさんは、この40年間でどんな変化があったと想像しますか?

「買物」と言えば「女性」と決めつける見方は問題なのですが、年代別の女性の1日平均買物時間分布は「山型」です。そのピークなのですが、76年は30代がピーク、2016年は60代後半がピーク、つまり今現在の70歳前後の人たちが、ずっと買物好きな、あるいは買物が習慣化している世代として浮き彫りになっています。2016年の60代後半ですから、ほぼ、それは団塊世代以上の元気な女性たちなのでしょう。

 男性はというと、かつては山型でなく、年代に関係なく買物時間は少なかった。しかし、2016年の結果では、50代までは傾きもなく時間も短いのですが、60代以降では明らかに右肩上がりです。退職後の団塊世代も、男性の中では依然として"パワー・ショッパー世代"です。

 この結果、どのように見たらいいでしょう?リアルな買物をする人たちは、団塊世代以上の高齢のみなさんと共に減っていくのでしょうか?じつは、僕自身は、団塊世代サラリーマンのメンタリティとは真逆だと自負していますが、買物というか、デパートやショッピングセンターをぶらぶらするのは大好きです。買物に来ている人たちの人間観察、馴染みの店員さんとのおしゃべり、売れているものの変化、そんな観察やコミュニケーションが好きなんです。

 だけど、最近ではお店の入れ替わりも激しく、コロナ禍で閉店になってオンラインだけの営業に変わったりもしていて残念に思うことしばしです。パフォーマンスだけで言えば、きっと、生活時間にはカウントされない、ネットショッピングで事足りるし、コスパもいいのでしょう。だけど、それって愉しいだろうか?と、考えてしまうのは、私がモノ中心の価値観にドップリ浸かって育ってきたからでしょうか? さて、10年後はどうなるんだろうか?「?」が渦巻く未来です。

ヒューマンルネッサンス研究所
所長 中間 真一
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