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くう・ねる・あそぶ
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42.jpg ある調査結果を見て、バブル絶頂期の頃の自動車のCMを思い出した。井上陽水さんが、車の窓を開けて「お元気ですかぁ縲怐v。脳天気なキャッチ・コピー「くう、ねる、あそぶ」が時代の風にのった。あくせく働くばかりが人生じゃない。「人間らしく、遊んじゃおうよ!」という、バブルまっただ中でのメッセージは、いま、小さな子どもたちに向けなくてはならないのか......

 東京都による「幼児期からの健康習慣調査」の結果が発表された。ますます夜型化が進む子どもたちの日常が明らかだ。午後10時以降に寝る子どもは、保育園児では過半数を超える54.0%に達しており、約10年の間に10%以上増加したとのことだ。午後9時以降となると90%近い(幼稚園児では67.1%)のだから、「東京では、ほとんどの幼児は9時になっても起きている」と言えよう。小学生となれば、さらに就寝時刻は遅くなる。なんとなく起きていることが多いようだが、受験勉強もあるらしい。かつて、5時間も寝ていたら合格しないという意味で、大学受験生の睡眠時間を「四当五落」と言っていたが、今やそれは難関中学を目指すために大手進学塾に通う一部の小学生にあてはまっていると聞き驚いた。もちろん、そういう子はごく一部の極端な例だろうが。

 睡眠時間が少ないということは、脳や身体の活動にメリハリが無くなり、幼児期ならではの心身で感じる刺激と成長のサイクルを阻害し、人間という動物の成長にとって、さまざまな問題の原因となるのではないかと心配だ。大人社会の「夜型化」、いや「24時間営業化」が急速に進む中で、巻き添えになってしまう子どもたちの日常を放っておいてよいのだろうか?

 しかし、夜になっても眠たくならない子どもに「寝ろ!」と言っても無理だ。そこには、昼間に体を使って遊びきれずに体力をもてあまし、TVやゲームで脳は覚醒されっぱなしの子どもたちの心身の現実がある。さらに、仲良しを通り越して、ペット化とも思えるような親子観を背景に、夜遅くからの家族そろっての食事や団らんにも原因があるようだ。

 思う存分に体を動かして遊べないから、お腹が減らないのも当然だ。そうすると、食事の時間は遅くなり、食べやすいものや好きな食べ物に偏りがちになる。しかし、山登りをして山頂でかぶりつくおにぎりのおいしさは、どんなに凝ったグルメの料理にもかなわないだろう。そんな人間らしい、生き物らしい「喰い方」のチャンスが、子どもたちの日常から消えゆくばかりだ。

 何から始めれば、小さな子どもたちは、人間という動物らしい成長の場「くう・ねる・あそぶ」の日常を取り戻せるだろう。やはり、1st.ステップは「あそぶ」だろう。目一杯あそぶから、腹が減って喰う。あそんで、喰って、腹一杯になって疲れて眠る。そして、心と身体と脳の疲れを回復(一日の生活で得た刺激を成長の糧に)して次の朝を迎え、再びあそぶ。これは、私たちが子どもだった頃、あたりまえに繰り返されていた毎日だ。

 文部科学省も、このあたりまえを取り戻すべく、4月から「早寝早起き朝ごはん国民運動」という大規模な運動を展開し始めた。「そこまで来たか」というのが率直な感想だった。子どもたちの生活習慣を、政策的に矯正しようというのは難しいかもしれない。しかし、国民運動として「大人たち」が「子どもたち」の日常の異常を感知し、眼差しの向け方を変え始める契機づくりの効果を期待したい。それは、もの知り顔の大人が、子どもたちや若い親に対して説教したり、強引に介入したりするやり方では実現しないだろう。子どもたちの「あそび」の場を、先を見通しながら、遠くから見守り、必要とされれば自ら見せることこそ、安心してあそびきれる子どもの環境を支えることになるはずだ。出しゃばり過ぎずに子どもたちと関係性を持てるゆとりを、心の中に持てることがあたりまえにならないものか。子どもも大人も、あたりまえにハッピーでありたいものだ。


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