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【コラム】記憶に残る学びを大切に
田口智博

 7月下旬に衆議院が解散となってから40日間の選挙戦を経て、8月30日に総選挙が実施された。今回は選挙運動期間がこれまでのものと比べて長く、その間、テレビや新聞などの報道を通して、選挙にまつわる話題を頻繁に見聞きすることになった。したがって、自ずと選挙について考える機会が増える中、ふと小学生の頃、学校の社会科の授業で先生から「選挙権が与えられる年齢になったら、必ず投票に行くように」と、教わったことを思い出した。確か当時の授業は、参政権の一つである選挙権を例に挙げて、「権利は行使しないといずれなくなってしまう」という趣旨の内容だったという記憶が甦る。

 過去に学んだ事柄について、日頃なかなか思い出す必要に駆られることは少なく、またいざ思い出そうとするとすぐには頭に浮かばないものである。今回、たまたま“選挙”という話題がきっかけとなって、かつての学びが頭の片隅にあることを再確認できた。それと同時に、そうした記憶は、社会の中で生きていく上で、何かしら考え方や行動への指針として、自分自身の中に残っているということをあらためて実感させてくれた。

 そうこうして昔の記憶を辿っていると、当時、学びの場であった小学校は地域柄、グラウンドがとても手狭で、運動会の時などはトラックのスペースの確保で目一杯だったという情景も思い出される。
 そんな学校の校庭について、以前ニュースで、最近は従来の土から徐々に芝生に変わりつつあるということが取り上げられていた。校庭の芝生化では、「安全かつ多様な運動を可能にする」「環境教育の教材として活用できる」「砂の飛散・気温上昇を抑える」など、子どもたちの教育面だけでなく、環境面でも効果が期待されているという。文部科学省の統計によると、全国の校庭がある公立の小中高のうち、1,506校(2008年5月時点)が芝生化され、5年前と比較するとその数は25%増加している。

 芝生化の実施は、文科省の補助による整備、あるいは地域の自主的な取り組みなど学校によってケースバイケースとなっている。なかでも、学校は子どもたちだけでなく、近隣の人々も集う場所と位置づけているところでは、地域が主体となってその取り組みが積極的に進められているそうだ。そして、そうした地域の人々が協力して芝生化を進めるということが呼び水となって、人と人とのつながりを取り戻し、コミュニティ再生への変化をもたらすという副次的な効果も見られるという。当然、こうした校庭の芝生化を通して、子どもたちを育む環境が充実し、そこでの学びの内容がより深く印象づけられることへの期待が膨らむ。

 冒頭で触れた今回の選挙では、教育ということに関してもさまざまな議論が交わされていた。「格差」という言葉をしばしば耳にする現在の社会において、教育を受ける機会の平等などは当然大切にされなければならない。一方で、そうした制度や仕組みもさることながら、子どもたちの記憶に残るような学び、またそれを効果的にするような環境などについても、しっかりと築き上げ、整備していくことが求められるように思う。「子どもたちが将来、多くの学びの記憶を糧としながら生きていけるような実りある教育の実現を」という思いを抱きつつ、今回、有権者として一票を投じてきた。


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