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【コラム】環境への意識の変化を経て
田口智博

 久しぶりに車を運転して高速道路を走っていると、以前と比べてハイブリッド車が随分増えている様子が目に留まる。地球温暖化の防止に向けて温室効果ガス削減が叫ばれる中、人々のエコ意識が高まりを見せ、また政府によるエコカー減税や購入補助金が後押しして、ハイブリッド車の需要が急速に伸びていることがわかる。

 そのような光景を横目に、前に聞いたある自動車メーカーのエコプロジェクト立ち上げ期の話を思い出した。現在のように環境問題がクローズアップされていなかった1990年、環境に関する世論調査では「エコへの関心あり」はわずか5%、「エコ商品購入意向」に至っては0%とそれは結果にも如実に表れていた。その後、1996年にそのメーカーがエコへの取り組みを正式に表明し、プロジェクトが本格的にスタートすることになる。その際にも同様の世論調査が行われたが、「エコへの関心あり」は50%に上昇していたものの、「エコ商品購入意向」は依然として5%と低い水準に留まっていたという。当時、人々のエコへの意識は徐々に向上しつつも、エコ商品購入の行動までには高いハードルがあったことが窺える。

 そんな厳しい状況下で始まったエコプロジェクト。そこでは車の負の部分にもしっかりと目を向けて、マスコミ等を通じて人々のエコへの認知と理解を促し、またシンポジウムやセミナーの開催によってその共感につなげるといった間接・直接広報を上手く織り交ぜながら進められることになる。そして、1997年の第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で議決された「京都議定書」に合わせてハイブリッド車を世に送り出し、それにより“環境イメージNo.1企業”の達成につながる。それが今からちょうど12年前である。あらためて、そこから今日までを考えてみると、ここ最近のハイブリッド車普及の勢いには目を見張るものがある。そうした中、私たちは今、周りを走っている車の変化を眺めるだけで、おのずとエコということについて日頃から意識させられる状況であると言える。

 そう言えば、先日、教育関係の方にお話を伺う機会があった。その中で現在の学校教育において昔と比べて確実に変わっているものの一つに、「環境教育」ということが挙げられた。そもそも環境教育はここ15年ぐらいの間で学校において行われるようになり、教科は理科だけに限らずあらゆるものにその要素が取り入れられているという。そうした影響もあってか、今の子どもたちは“人類、世のため”といった社会貢献の意識や発想が格段に高まっているそうだ。こんなところからも、昔と違って、今の子どもたちを中心にエコ意識は、想像以上に備わってきていることが感じられる。

 ここ数十年の間に私たちは環境ということに対して、日常の風景から学び、また考えることができるようになってきている。また、次代を担う子どもたちに至っては、既に学校教育の中で多くのことを学び、それに根差して現在の社会を見ていることになる。最近、京都のまちづくりに関する議論の場へ足を運んだ際、そこでは35歳以下の若者からの意見として、エコへの取り組みでは「みんなが無理なく少しだけ努力(=“1%運動”)」というフレーズの提案がなされていた。
 エコ意識の醸成への流れは確かなものとなりつつある中で、これからはそれを土台として一人一人が具体的なアクションをどのようにしていくか、ということが強く求められていくに違いない。


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