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【コラム】「ふるさと」をつくる修学旅行
鷲尾 梓

 都市部の小中高校を中心に、田舎の一般家庭に宿泊して農作業などを体験する「民泊型」の修学旅行が増えているという。「民泊型」が増え始めたのは5年ほど前から。日本修学旅行協会のサンプル調査によると、2008年は、全国3万9000校のうち、1000校近くが「民泊型」の修学旅行を実施したとみられている。全体からすればまだ少数ではあるが、面白い試みだ。

 人気の行き先のひとつに、私が高校の修学旅行で訪れた伊江島も含まれていた。那覇のホテルに泊まり、日帰りで島に渡った。遠浅の静かな美しい海に真っ白な砂浜。レンタル自転車で島内を散策していると、学校帰りの小学生とすれ違った。たまたまだったのかもしれないが、素足で歩いていた彼らを見て、「うらやましいな」と思ったものだった。都会のアスファルトの通学路では、素足で歩くわけにはいかない。目が合って、「こんにちは」と挨拶を交わし、擦れ違った。けれど、「旅行者」である私たちと、その土地で暮らしている彼らの接点はそれだけだった。

 しかし、「民泊型」の修学旅行の様子はこれとは違う。学生たちは一般の家庭に泊まり、農業や漁業、商店、食堂などの家業を手伝いながら、普段の島民の暮らしをまるごと体験する。一泊とはいえ、家族のように共に過ごす時間は濃密なのだろう、島を離れるとき、別れを惜しんで涙する学生も少なくないのだという。「島のお母さん、お父さん」と、手紙やメールでのやり取りが続くことも。修学旅行の後、家族と共に改めて伊江島を訪れた学生も160人にのぼるのだそうだ。

 修学旅行から帰れば、またそれぞれの日常が始まる。けれど、自宅から遠く離れた小さな島にもうひとつの「ふるさと」ができるということは、学生たちが、「沖縄」という地について、普段生活している都市部と異なる地方ならではの事情について、「環境」や「過疎」の問題について・・・、日頃メディアを通じて情報を見聞きする際にも、より身近で、自分に関わりのあることとして捉えることにつながるはずだ。

 受け入れ側の島の人々にとっては、経済的なメリットはもちろんのこと、自分たちの住む土地の持つ魅力を再発見し、誇りを持つことにつながる。「子どもたちがすべてに感動しているのを見ると、嬉しくなる」「自分の子どもも食べなかったシブイやパパイヤ、ヘチマなどを説明しながら出して、沖縄の食べものを見直している」(情報誌「しまたてぃ」より)といった島の人たちの心の動きは、外からやってきた修学旅行生たちとの交流がもたらした、新たな財産とも言えるだろう。地域の宝を掘り起こし、未来への宝を育んでいく、こんな素敵な取組みが、全国各地で広がっていくと良いな、と希望を感じる。

○社団法人沖縄建設弘済会 情報誌「しまたてぃ」48号 p44-46
http://www.okikosai.or.jp/20kouhou/simatatei/top48.htm


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