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【コラム】 将来を見据えて「教育」を考える
田口智博

 自動車免許の更新手続きをするため、先日、京都の伏見区にある運転免許試験場に足を運んだ。幸いにして、私自身、過去5年の間に交通違反等がなかったおかげで、手続きの中では最もシンプルな優良運転者講習を受けて、無事更新を終えることができた。
 前回の更新はちょうど5年前に遡るが、今回講習を受けていると、その間、道路交通法ではいくつかの改正が施されていることをあらためて知る機会となった。たとえば、既に3年前からではあるが、自動車免許に「中型免許」を新設の上、「普通免許」で運転ができる車の規模を縮小してトラック運転事故を未然に防ごうという改正などがその一つであった。
 そのような説明と併せて、手元には参照資料として免許更新時の講習教本が配布されていた。その冊子はつい最近、民主党政権による事業仕分けにおいて、“隠れたベストセラー”と揶揄されて物議を呼んだことで記憶に新しい。実際には講習内容の理解の助けとなるように、こうしたものが全く必要なしとまでは思わないが、国の厳しい財政状況に鑑みると確かに工夫の余地があっても良いとは感じる。

 ところで、日本では財政面の問題が、教育分野に大きな影響を及ぼすということは、まだそれほど表立ってはみられてはいないように思う。しかし、国外に目を向けてみると、アメリカ・ハワイでは財政難が引き金となって、一部の公立学校では週5日から週4日へと、生徒の休みを1日増やす苦肉の策を取らざるを得ない状況に陥っているという。週休3日によって、学校運営に関わる教員やスクールバス運転手、カフェテリア職員などの人件費、また交通費や光熱費といった経費の削減につながるからだ。こうした現状は、厳しい財政状況の下では「教育」という分野が必ずしも聖域ではなく、その矢面に立たされることを痛感させられる。

 一方で、このような様子を見かねて、子どもを持つ親たちを中心に世論では、従来通り週5日制に戻すよう働きかける動きが強まりをみせているそうだ。
 もともと、ハワイはアメリカの中で最も授業時間、授業日数が少ない州として知られる。また、年間の授業日数・授業時間数の最低ラインを定められていないという。そうした中にあって、最近では州を挙げての教育改革への取り組みが出てきている。その流れの一端として、議会ではこの6月に、“義務教育である学校教育において1年間に少なくとも180日の授業日数を必要とする”との法案を制定していることがニュースになっていた。これは、州と教員組合が契約を結び2011年度から実施されることになる。ただ、授業日数の増加に伴って必要となる教員の人件費については、州政府はこの夏から交渉を始めて、折り合いをつけるそうだ。まだこれから解決を図らなければならない課題が見て取れ、そう単純な問題ではないことがわかる。

 日本においても、「教育」ということに関しては、政治の舵取りにより進められる面が多分にある。たとえば、平成21年度からは自動車免許の更新のように、教員の資質・能力を保つことを目的に、教員免許の更新制といったことも導入されている。そのような制度の今後のあり方については、現在も引き続き検討が進められているところではある。こうしたことを考えていく上では、当然、財政面なども考慮していく必要性も想像される。とは言っても、次の世代を担う人材を育む“教育”が、国の財政状況など一時的な要因によって左右されるのではなく、しっかりと将来を見通す中でより向上していくような取り組みとして進められることを望まずにはいられない。


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