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【コラム】 遊びから学ぶ現実
田口智博

 日常から一時的に距離を置くために遊びに出掛けたつもりが、日常の中で起こっている問題に目を向けざるを得なくなる。最近、そんなシチュエーションに遭遇する機会が増えているような気がする。

105.JPG 例えば、夏休みを利用して南の海に潜りに行く。すると、温暖化などの影響で白化現象が起きているサンゴを見かけるというのもその一つだ。本来なら、色とりどりの熱帯地域の魚やサンゴ礁が海中の豊かなシーンを彩り、その空間に身を置くことで普段とは異なる非日常の雰囲気を楽しめるはずである。しかし、白くなって崩れてゆきつつあるサンゴの姿を目にしてしまうと、どこか現実に引き戻される感覚が生じる。
日頃、世間では環境問題がクローズアップされており、そのような意識は幾分頭の片隅にあったとしても、わざわざ遊びの場にまでそれを持ち込む人はそう多くはないだろう。実際、それでは心の底から遊びを満喫できない気分に陥る。ただ、現実にそうしたものを目の当たりにすると、普段伝え聞く以上に、重い事実として受け止めてしまいがちである。それはどこか、強制的な教えの類のようなものである。

 今後、こうした日常が抱える問題の顕在化が進むにつれ、以前のように遊びということも容易く語れなくなってしまうかもしれない。現に、ダイビングのスポットとして有名な沖縄県慶良間諸島では、周辺海域へのダイバーの立ち入り人数の制限が来年にも実施されようか、といったところまで議論が進んでいると聞く。これはサンゴの白化現象とは直接的な関係はないにせよ、自然保護という観点から、まずは人的な影響を抑えていく動きである。

 同じような状況は、季節や場所が変わっても見ることができる。なかでも、冬のスキー場の景色なども、かつてと比べると積雪の量が随分少なく、ウインタースポーツに最適な時期も短くなっている印象を受ける。ここにも少なからず環境問題という現実が見え隠れする。今年2月、長野県飯山市のスキー場を訪れた時にも、それは実感することができた。
 その際、泊まった宿では、冬はスキーやスノーボード客、夏は合宿をする学生客が主である。ただ、冬のシーズンが短くなる中、最近は春に田植えの体験学習に訪れる小学生の受け入れを行うなど、利用者層に広がりが見られるという。宿の経営に対する危機感から出てきた取り組みに、先の沖縄での規制を行うケースとはまた異なる、少しポジティブな姿勢が窺える。ここで共通して言えることは、地域の環境や生活を破壊せず、自然や文化に触れるエコツーリズムという方向へ遊び方もシフトしていることである。

 近頃聞いた話の中で、今の子どもたちに自分たちが暮らすまちの未来像を描いてもらうと、自然環境を意識しているせいか、「緑の色使いが多い」「車は全てエコカー」といった傾向があるそうだ。そこには、子どもたちが日々の遊びや学びの中で見聞きする様々なものが含まれていることが想像できる。
 大人、子どもを問わず、遊ぶことにすら不自由さを感じる気配が漂う中で、昔は“よく学び、よく遊び”という言葉がしばしば使われたことを思い出す。現在においては、その順序を逆にした「遊ぶことから、よく学ぶこと」も同時に増えてきているように感じる。こうした「遊び」と「学び」の双方の視点を上手く両立、また組み合わせていくことが今後より求められていくに違いない。


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