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【コラム】 人材を育む新たな潮流
田口智博

 昨今の厳しさが増す経済情勢や多様化が進む価値観などを背景に、若者の雇用問題について取り上げられるケースがしばしば見受けられます。そんな問題意識をテーマに開かれたコンファレンスに参加した際、若年雇用に関しては、大きく3つの問題があるとの指摘がなされていました。それは、①新卒採用におけるミスマッチの存在、②新卒採用での失敗による挽回困難、③良質な雇用機会の縮小、ということです。

 

 ①の「ミスマッチの存在」は、大卒者数が増える中での企業側の採用数との需給悪化もさることながら、大企業の求人倍率の値が1を大きく下回る一方、中小企業では2倍弱と高止まりしていることに起因しています。続く、②の「失敗による挽回困難」は、フリーターの数が2009年以降、再び増加傾向を示すとともに、年長フリーターの定着化が顕著になっている現状が挙げられています。さらに、③の「良質な雇用機会の縮小」は、①とも関係が深く、人員に余裕のない中小企業を中心に、正社員であっても低賃金労働者ほど過重労働が拡大しているということによります。ここでのそれぞれの問題については、完全に切り離して考えられない部分もあり、まさに包括的な解決が望まれる指摘であると言えます。

 

 そんな中、最近、地域の人材育成に軸足を置いて活動を進めるNPO法人にいくつかインタビューをさせてもらう機会がありました。そこで柱となっている取り組みは、長期インターンシップという形です。若者が地元の中小企業において、事業活動へ半年~1年にわたって参画するアプローチを取っています。企業での一般的な情報提供や就業見学・体験に止まるのではなく、若者にとって本当に身になる経験を得るための機会提供というところに大きく特長づけがなされています。

実際にその活動を通じて、若者は、経営者の近くで事業を実践することができ、中小企業への理解・共感、またそれとともに起業精神が高まるということにつながっています。一方、経営者にも、これまでは人手不足などで取り組めずにいた新たな事業領域に、若者の力を借りて着手するということが可能になっています。若者の意欲が行動へとつながるように、企業がそのような若者を応援しようとするムーブメントが、確実に根付きつつあるという実感のこもった話が聞かれました。

 

若年雇用の問題を考えてみてもわかるように、このような実践による取り組みは解決に向けた手法として有効なところが多分にあるに違いありません。同時に、その中では意欲ある若者をいかにして生み出していけるかという点も必要になってきます。当然、教育に求められる役割は、高いものとなってくることが想像されます。近頃では、若者全体の可能性溢れる力の底上げを図っていくという観点から、"学び直しに効く学力"の重要性が指摘されています。これら教育と実践のそれぞれの現場での学びや経験が上手く実を結び、将来を担う人材を育んでいく新たな潮流の確立へ期待が高まります。


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