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てら子屋コラム

オールで科学、してきました。
~サイエンス・コミュニケーションの新たな試み~
澤田 美奈子

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 2007年7月7日、晴れ。織姫と彦星の逢瀬は無事かなっただろうか。時を同じくして、地上の世界では、「音楽」と「科学」との邂逅劇がオールナイトで繰り広げられていた。今回はそんなイベント、【SCIENCE CLUB縲怩ンんな宇宙が大好き笙・縲怐zの潜入報告。

 当イベントは、科学と音楽をこよなく愛す、有志の大学院生や社会人を中心に企画・運営された。

 「科学離れ」や「科学嫌い」の流れを受けて、広く一般の人に科学に親しんでもらうことを目的としたサイエンス・コミュニケーションの試みは、徐々に広がりつつあるが、専門家から非専門家への一方通行の知識の伝達に偏ったり、開催場所も大学や会議場だったりなど、まだまだ敷居の高いイベントも多い。

 それに比べて、この【SCIENCE CLUB】は画期的。なんといっても会場として、東京・六本木のクラブハウスを貸し切る、というのが斬新である。そして、アタマでなくカラダで「科学」してもらう窶披€白m識や情報よりも、科学というメ世界の見方モに触れてもらうことを目指したのも特色だ。「宇宙が好き」という条件の下に集められたゲストは、科学者、ミュージシャン、VJ(Visual Jockey)、学芸員、理系の大学院生など、多彩な顔ぶれ。参加客も、宇宙に関心がある人もいれば、宇宙に興味はないが音楽好きな人、ただ仲間と楽しく騒ぎたい人などさまざまで、年齢層は20代の若者がほとんどである。

 イベントは夜8時から始まり、朝の4時までオールナイトで行われた。

 中心となるのは、5組のミュージシャンの、それぞれの「宇宙」への思いを自由に表現したバンド演奏。演奏の合間には、国立天文台のスタッフによるプラネタリウム上映や「今夜の星空」解説、若手研究者による、天文学の研究内容や仕事紹介、オーディエンス参加型の実験ショー、VJによる映像音響ショー、ミュージシャンと宇宙物理学者との対談などがさしはさまれる。

 客たちは、ライブ演奏の心地よいリズムにカラダを委ねたり、グラス片手に研究者の話に聞き入ったり、見たもの・感じたことの感想を話し合ったりなど、思い思いの楽しみ方をしているうちに、夜は更け、そして夜は明けた。

 きっと会場にいた全員が感じ取ったことは、一見まったくかけ離れたものにみえる「音楽」と「科学」の根っこには共通して、世界に対する新鮮な驚き、不思議があるということだ。音楽も科学もその原点には「!」と「?」がある。

 宇宙物理学者×ミュージシャンの対談で、こんな話が出た。

 アニリール・セルカン氏は、トルコの宇宙物理学者、宇宙飛行士候補である。彼は、宇宙の誕生の音や、音楽を聴いているときに振動する自分の身体を構成する原子に大きな関心を寄せている。だから宇宙物理学と同じぐらい、ヘヴィメタ音楽が大好きだそうだ。

 キセルは、浮遊感溢れる独特の世界観が魅力の兄弟音楽ユニットである。そんなお二人は、これを機にセルカン氏の著書を読んでみたらすごく面白かったとのこと。また、音のメやわらかいモメかたいモも原子の振動によって決まるものなのですね、と興味深げに語っていた。

 彼らは、科学者とミュージシャンという見かけ上の違いはあるが、そんな世界のメフシギモにとらわれた点では同じ者同士だ。

 きっと、今宵のイベントの参加者は、これをきっかけに自分の周りの世界を見るまなざしがちょっぴり変わるのではないだろうか。足元にある地球が誕生した偶然の不思議。その上に生まれ落ちた自分という奇跡。何気なく見上げていた空の向こうにある未知の世界への好奇心。そんな風に自然と身の回りに「?」と「!」が増えていく。それはアートの始まりであり、サイエンスの始まりでもある。

 今後、こういった肩肘はらずに「科学」できる場が増えていくといい。
 センスのいい音楽に美味しいお酒、気の合う仲間とのおしゃべりと、科学の教えてくれるメフシギモとを、同じように楽しめる、そんな大人になれたら、なんてクールなんだろう。

<参考>
○【SCIENCE CLUB縲怩ンんな宇宙が大好き笙・縲怐z HP


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