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てら子屋コラム

【コラム】子どもが体験すべき危険なこと
~プログラムから逸脱した学びの大海原~
中間 真一

新年、明けましておめでとうございます。

今年が、明るい未来に進んでいく年となるよう、てら子屋コラムにも馬力をかけていきたいと思います。読者のみなさま、よろしくお願いいたします。

 

好天の元旦となりました。近くの神社は、初詣の老若男女が集まり、例年以上に賑わっている感じです。そして、いい塩梅の風も吹いています。しかし、外遊びしている子どもたちも、なかなか見つけることはできません。もちろん、道路では危険ですし、そんなに広い公園もなかなかない。他人の畑に入って遊ぶことも昔のようには許されない。こうして、子どもたちの生活世界は、安全、安心、健康のリスクを排除することにより狭められ、効率、即効性、利得へのムダを最小化するためにも狭められているのです。

 

 子どもたちは、どこで何をして遊んでいるのでしょうか?家の中で、施設の中で、イベントの中で、いつも何らかの"プログラム"の中で遊んでいるように思えてなりません。そこで、プログラムって何か?を、私なりに再定義してみると、およそこんな感じです。「ものごとを所期の目的に向けて進めるための、手続き、手続きの順序、作業の組み合わせ、筋道」いかがでしょうか?つまり、プログラムの作り手の想定の中、思惑の中で遊んでいるということになります。

 

 確かに、そういう遊びも楽しいものですが、あまりにもそれだけになってしまうことには違和感があります。遊びって、いつも誰かの思惑の中で仕掛けられているものでしょうか?遊びって、常に何かゴールに向かう効率が大切でしょうか?私は、特に子ども期の遊びには、プログラムから逸脱したフィールドでのおもしろさを求めたいような気がしてなりません。

 

 先日、『子どもが体験するべき50の危険なこと』というおもしろい本を読みました。ことにきっかけは、著者の一人でコンピュータサイエンティストであり、工作の学校(tinkering school)の創始者でもあるゲイバー・タリーのTED2007での講演" 5 dangerous things you should let your kids do"(子どもがすべき5つの危険なこと)だそうだ。

http://www.ted.com/talks/gever_tulley_on_5_dangerous_things_for_kids.html

ちなみに、TEDでの5つは以下のとおりです。

1)火を使って遊べ

2)ポケットナイフを持て

3)槍を投げろ

4)電化製品を分解せよ

5)デジタル著作権法に違反せよ/車を運転しよう

 当時執筆中だった書籍から選んできた5つです。てら子屋コラムの読者のみなさんなら、5つそれぞれの背景に、どんな学びの素がありそうか、既に想いを巡らせているのではないでしょうか。「てら子屋」のワークショップやキャンプを開いてきた私としては、心の底から拍手したくなりました。

 彼は講演の中で「10歳以下の子どもには、ゴルフボールよりも尖ったものは危ないというならば、そうやって尖っているものに接することなく育った人間が、少し尖ったものと出会ってしまったらどうなるだろう?」と問題提起しています。また、火の神秘、自然をコントロールする感覚は、火遊びしたことのない者にわかるはずがないとも言っています。これは、「てら子屋」で火起こしキャンプをした私も、まさに同感でした。

 

 危険を知ることによって危険を回避する。このことは、不快を知ることによって快適な感覚を知ることにも通じるし、誰かの思惑によるプログラムを超えて、一人ひとりの自分の感覚で学ぶための環境です。今、私たちはムダなくリスクを排除し、ムダなく目標に向かうため、どんどん子どもたちの居場所を狭め、繭の中に閉じ込めているようです。本当にイノベーションを興せる人材を育てるのであれば、仕組まれた学びではなく、自分の主体的な学びが必要であり、そのためのムダな環境と、それを遠巻きに見守る目配りが教育には必要なのではないでしょうか。どこに向かうか、自らの経験と勘を頼りに試行錯誤を繰り返し、積み重ねながら、学びの大海原を航海できるような社会へ向かいたいものです。


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