新型感染症の脅威拡大

予防手段の欠如(1)

個別社会課題

特に後進国においては感染症予防のワクチン接種を受けない(受けられない)ために感染者が増加する

ソーシャルニーズ

病院へ行かずに、自宅でワクチン接種ができる技術・システム

ビジネス事例

インフルエンザワクチンパッチ(米エモリー大学、ジョージア工科大学)

米エモリー大学とジョージア工科大学の研究チームが、開発中のインフルエンザワクチンパッチの臨床試験を行い、注射と同様の効果と安全性が確認されたと発表。
パッチは絆創膏ほどのサイズで、皮膚を貫通する極めて微小な長さの針(マイクロニードル)が100本付いており、皮膚に貼り付けるだけで、針は皮膚内で溶解するため安全としている。
パッチを貼ってしばらく軽く抑えているだけでワクチン接種できるという簡便な方法のため、医療機関へ行かずに自宅での接種が可能。研究チームは今後も臨床実験を行うとともに、インフルエンザ以外のワクチンへの応用も研究をしている。
現在、特に後進国では医療施設がなく、感染症予防ワクチン接種を受けられず感染して亡くなっていく人が数多く存在していることから、様々な感染症のワクチン対応が実現すれば、世界中で多くの命が救われることにつながる。

新型感染症の脅威拡大

予防手段の欠如(2)

個別社会課題

最強の感染性と毒性を持つエボラウイルスが原因となって発症するエボラ出血熱の検査に最長で6時間もかかり、感染が拡大してしまう

ソーシャルニーズ

特別な装置もない簡易的な検査で、かつ短時間のうちに感染が分かる技術・システム

ビジネス事例

エボラウイルス迅速診断キット(デンカ生研・北海道大学)

エボラウイルス迅速診断キットは、北海道の高田教授とデンカ生研株式会社との共同研究により開発された。特別な器具や装置を必要とせず、約15分で検査結果が判明するため、医療施設が十分に整っていない地域においては有効性が高い。
5種類あるエボラウイルスのうち3種類を検出することが可能であり、科学的にもウイルス検出力は証明されている。現在、世界保健機関(WHO)へ体外診断薬・機器の事前承認の申請中。
この診断キットは、2016年にエボラウイルス病発生が報告されたコンゴ民主共和国にテスト提供として400キット送付されている。
供与されたキットは、コンゴの生物医学研究所や国内診療所においてエボラウイルス病感染の疑いがある患者やウイルスを保有している可能性のある動物に対し、検査・診断の補助として使用された。
今後も病院施設のない途上国においてエボラウィルスが発生した場合、感染の早期発見に寄与することで、感染拡大を未然に防ぐことが期待されている。

新型感染症の脅威拡大

予防手段の欠如(3)

個別社会課題

インドの農村では衛生環境の悪化により、年間約180万人の子供が死亡している

ソーシャルニーズ

石鹸による手洗いの普及に向け、貧困からの脱出を目指して自立する意欲のある女性をディストリビューターとして育成、製品を販売させるしくみ

ビジネス事例

プロジェクトシャクティ(ユニリーバ)

「プロジェクトシャクティ」とは、ヒンドゥスタン・ユニリーバ(ユニリーバのインド法人)が、自社製品をインド都市部だけでなく、従来のディストリビューターでカバーできない農村地域に直接販売するネットワークを構築してきたしくみ。
石鹸や洗剤、シャンプーの存在すら知らない農村において、潜在的に大きな市場を開拓することを狙いとしながら、貧困からの脱出を目指し自立する意欲のある女性をディストリビューターとして育成し、製品を販売させた。
「シャクティ・アマ(活力のある女性)」と呼ばれるこれら女性たちを育成することで、ユニリーバの売上拡大だけでなく、女性の経済的自立を促していくことにも貢献している。
さらにディストリビューターが販売のために推奨した石鹸を使用する手洗いの普及は、衛生環境の悪い農村地域を改善に導き、子供の死亡率を減少させている。

生活習慣病の拡大

予防手段の浸透不足

個別社会課題

疾病回避可能な未病者を早い段階で見つけて予防する方法が周知されないため、発病者の増加につながる

ソーシャルニーズ

病院で診察を受けなくても、日常生活の行動・状態センシングにより発症前に身体の変化や問題を検知する技術

ビジネス事例

音声病態分析学(東京大学大学院医学研究科)

音声病態分析は、人の声に含まれるさまざまな感情や興奮の度合いを測定し、健康状態を判断する。喜びや悲しみといった感情は脳から副交感神経系の反回神経(迷走神経)に伝わり、声帯や心臓につながる。緊張すると心臓がドキドキしたり、声が上ずったりするのは反回神経の働きであり、自らの意思では制御できない「不随意反応」になる。
一方で人が声を出す際には、自分の意思で口や舌などを動かし、言葉や感情を表現する「随意」の部分があるため、「不随意」と「随意」部を組み合わせて分析することで、うつ病や脳梗塞の患者と健常者をほぼ完全に見分けることが出来るようになる。
この分析を活用することで、病院に出向いて医師と対面しなくても、スマホで普通に話しているだけで、声を分析し、体調変化が捉えられる。
そのためのスマホアプリ開発により、日常会話から心の状態を分析し、元気圧(現在の心の状態)と心の活量値(長期的な心の状態、一定期間の累積データ)を測定、通常の数値と比べることで、体調変化がわかる事例もあがっている。

生活習慣病の拡大

医療費の高騰(1)

個別社会課題

在宅介護の増加が、要介護者の機能低下を早め、介護者共々ADL、QOLを低下させる

ソーシャルニーズ

在宅要介護者の機能低下を防ぐため、残存機能を活かしつつ自立歩行をサポートする技術・システム

ビジネス事例

ロボティックウェア「curara」(信州大学)

ロボティックウェア「curara」は、信州大学橋本研究室の橋本教授が中心となり開発にあたった、”着る”生活動作支援ロボット。
高齢化が進み在宅介護も増加する未来を見据え、介護支援者の不足を補うロボット技術による介護支援の検討から開発された。
目指したのは、身体能力が低下している要介護者が違和感なく使用できるロボット、このことから人の動きに動作の調子を合わせることができる「同調制御法」、筋電などの身体情報を取得する必要のない「相互作用トルク検出法」といった技術を開発、また、ロボット骨格を持たない「非外骨格構造」とすることで、軽量かつ装着者の自然な動作を妨げないようにしている。
最終的には、使用する要介護者が1人で装着し、1人で歩けるように、更なる改善(軽量化、装着簡易化等)を続けており、現在第4号機まで開発が完了、2018年の第5号機を経て2019年には製品化を予定している。

生活習慣病の拡大

医療費の高騰(2)

個別社会課題

日々のバイタル計測、チェックを怠り、症状を悪化させてしまってからの通院となることで医療費を高騰させてしまう

ソーシャルニーズ

継続的にバイタルを計測して把握することを容易にし、日々の変化から早期に疾病に気づくことができるセンシング技術・システム

ビジネス事例

オムロンコネクト(オムロンヘルスケア)

健康管理アプリ「OMRON connect(オムロンコネクト)」はオムロンヘルスケアが提供するプラットフォーム。
オムロンコネクトで取得・管理するデータは、自社アプリとの連携の他に、他社健康・医療関連のアプリとも連携することが可能となる。
健康管理の方法が多様化し、個々人に合った方法でバイタルデータの管理をしたいというニーズが増加したため、オムロンの健康機器で計測したデータも、今まで使用していた他社アプリやサービスで一元管理できる。
オムロンコネクトで管理可能な健康データは、血圧・脈拍、体重・体脂肪、歩数・消費カロリーなど多数に及び、継続的に記録し、グラフ化をすることで日々の変化を読み取り、疾病予防につなげる。

生活習慣病の拡大

医療費の高騰(3)

個別社会課題

インドにおける貧困層の白内障患者は、手術をすれば治ると分かっていても医療費が高いため、そのまま放置をするしかない

ソーシャルニーズ

貧困層患者への診察や手術を行っても、病院の優良経営を維持できる技術・システム

ビジネス事例

貧困層白内障患者の診療システム(アーバインドアイホスピタル)

貧困層白内障患者の診療システムを行っているのが、インドの眼科病院であるアーバインドアイホスピタル。
訪れる患者の3分の2に無料手術を行い、外来患者のうち45%に無料診察を実施しながらも、政府等からの補助金・寄付金で賄う訳ではなく、自助努力によって利益率50%超を実現している。
医師1人が年間に行う白内障の平均手術数は約2,000件、時間は10分で 終了する。しかも品質を落とさないため、徹底した分業体制とIT活用によるデータ管理を行い、医療ミス等を一切起こしていない。更に遠くの患者のアクセスを良くするため、出前診療を行い、キャンプで一日1000名以上の診療も行う。
これらの高効率・高品質・高アクセスが、無料手術や無料診療を行っても好業績を生み続ける優良病院経営を成立させている。

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