COLUMN

2014.05.01田口 智博

ウェアラブルに求められるパーソナル化

 
近頃よく耳にする言葉"ウェアラブル"について、朝日新聞のデータベースから過去に遡って調べてみると、最初の登場は雑誌AERAの1998年2月の「着るコンピューター」という見出し記事に当たるそうだ。
今から16年前、既に取り上げられていたわけだが、最近ではこの分野で多種多様な製品開発が進んでいる。思い浮かぶところでも、眼鏡型、時計型、衣類や靴への埋め込み型、体への貼り付け型など、多くのウェアラブルデバイスと呼ばれるものが出現してきている。また利用シーンは、ヘルスケアからスポーツ、エンターテイメント、作業現場など多岐にわたる分野で可能性が広がろうとしている。
こうしたウェアラブル端末は、国内では2013年時点ではおよそ23万台が市場に出回っているという。そして、5年後の2018年には、475万台にまでに市場が拡大するとの見通しもあって、今後目の離せない領域であることは確かだ。
 
アメリカでは、新たなトレンドに敏感なユーザーを数多く抱える中で、Google社のグーグルグラスの装着によって、スマートフォンの利用が従来の20%程度まで減少するケースも確認されている。また、社会全体でも、そうしたウェアラブルデバイスの装着に関して、人々が寛容になりつつあるという変化も出てきているそうだ。
そんな中、ちょうど3月下旬に参加したウェアラブルテックEXPOでは、「ウェアラブルは、世界を変えるか。」を標題に、多くの最新トレンドの紹介やトークセッションが繰り広げられていた。
そこでテーマの一つとなっていたのは、アメリカのケースはさて置き、日本でウェアラブルデバイスはこれから社会に普及していくのだろうか、ということであった。技術的には確かに小型・軽量化、省電力化が進み、新たな製品が生み出される土壌が整いつつある。一方で、利用者の立場では、まだまだ装着に伴う活用方法やメリットの理解が十分に浸透していく状況にあるとは言い難い。
 
 セッションの場で話に出ていたことは、人々が街中を歩いている際、服装が他人とまったく同じというケースはほぼない。それと同じように、ウェアラブル端末という身に着けるデバイスである以上は、ファッションのように個人とデバイスの相性の良さへの工夫が欠かせないであろう。それが一つ、これからの普及の鍵を握っていくのではないかということであった。
 実際、アメリカのMisfit社の「Shine」という2013年に発売された運動管理ウェアラブルデバイスでは、25セント硬貨程の大きさでアクセサリーとして装着できるデザインが採用されている。開発にあたっては、利用者が他のお洒落とのバッティングを気にせずに済むもの、家に忘れたとしても取りに戻りたくなるもの、そしてあらゆる場面でウェアラブルということを目指したという。服装のように個人の自己表現という部分を考慮しながら、商品やサービスがコンフリクトを起こさずにフィットするという点が重視されているのだ。
これからのウェアラブル時代に向けて、まさに身に着けるという言葉そのものにファッションという面から、デバイスやデータをどのように個々に特色あるパーソナルなものとして定着させていけるかが大きなテーマになっていくはずである。
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