COLUMN

2022.02.07小林 勝司

「SINIC理論」から見えてくる“和える未来”

『OMRON Human Renaissance』は、未来創造を実践するMZ世代の識者と共に、オムロンの未来シナリオ「SINIC理論」との共通認識を掘り下げ、これからのありたい未来の姿を考えるオンラインイベントである。第6回は、「日本の伝統を次世代へつなぐ」をコンセプトに事業活動を展開する株式会社和える代表の矢島里佳氏をゲストに迎え開催された。

矢島氏の事業活動に通底する“和える”とは、異素材の物同士が互いの魅力を引き出し合いながら一つになり、より魅力的な価値を生み出していくという発想である。日本古来伝わるこの“和える”という発想は、「SINIC理論」に照らし合わせてみると、未来社会を形成する上で重要なキーファクターになり得るのだ。

「SINIC理論」では、来るべき未来社会について、「(最適化社会、自律社会とは)自動化社会における人間疎外から解放され、主体性と責任の時代、さらに人間らしい生きがいを見出せる創造の時代。そのために個人的・社会的欲望の変化と、それを充足する最適経路を発見する機能と、全ての人にとって生きがい見出せる方法が発達している」と予測している。言い換えれば、個人と社会の欲求が最適な形で充足する機能を確立することこそ、誰一人取り残すことない豊かな未来社会を形成すると仮説立てている。

個人と社会の欲求が最適な形で充足する機能を確立するには、“混ぜる”ではなく“和える”発想でなければ、社会の欲求は満たされても、個人の欲求は満たされない。矢島氏の解釈を借りれば、“混ぜる”とは異素材の物同士が混ざり合い、別の物を生み出すことを意味するが、社会に置き換えれば、新たな価値を生み出すために、異なる価値を画一化することと解釈できる。一方、“和える”とは、異素材の物同士が互いの魅力を引き出し合い、別の物を生み出すことを意味するが、社会に置き換えれば、新たな価値を生み出すために、異なる価値を自立共生化することと解釈できる。もし「SINIC理論」で志向する未来社会を手繰り寄せるのであれば、この“和える”の本質を追及することが重要であろう。
PAGE TOP