COLUMN

2022.10.06小林 勝司

企業組織の未来を考えるヒント

前回のコラムでは、未来社会における豊かさは、エウダウモニアといった人生の意味や目的に対する充足感が主な指標になると予測した。そして、豊かさが多元化すれば、個人と組織の関係性はより複雑化し、延いては、企業組織の有り様もドラスティックに変化していくと考えられる。今回のコラムでは、こうした企業組織の未来について考えて参りたい。

企業組織の未来を考えていく上では、現在から未来に向けての時間軸と、個人と組織の変化軸で捉えていく必要がある。例えば、現在社会において組織のフラット化が進む中、年齢、性別、障がいなどあらゆるハンディキャップを取り払う価値観が醸成されていき、さらに、多様なライフスタイルを同時に営むことが可能な労働時間の分散化が定着していくと考えられる。また、地政学リスクが顕在化する中、企業理念を拠り所としたグローバル組織エンゲージメントの強化や、さらに、国境を越えた社員間の相互扶助を可能にする仕組みが整備されていくことであろう。

一方、未来社会において分散型社会が到来すると、DAOの顕在化により組織の不要化が進み、新たなコンセプトの企業が次々と確立されていくであろう。また、量的な経済成長が飽和し成熟社会が到来すると、成長のみを志向する企業組織が淘汰されていく。さらに、ティール組織など真に自律した組織が志向されると、エウダウモニアに即した社員への多様な価値の還元や、テクノロジーを活用したルーティンワークからの解放が加速していくに違いない。

要するに、企業組織の未来の解像度を高めていくには、現在社会において顕在化している課題を起点としたフォーキャストと、未来社会における仮説を起点としたバックキャストを往復する創造力と感性が不可欠である。組織・人事戦略というフレームワークのみでは、重要なヒントを見逃しているかもしれない。
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