COLUMN

2019.01.07田口 智博

“デジタル化”から“デジタル的手法化”による価値づくり

 新年、あけましておめでとうございます。
 2019年は、これまで30年間馴れ親しんだ「平成」という元号が、新たな名称へと変わる大きな転機を迎えます。多くの人にとって、今年は例年以上に記憶に刻まれる予感を覚える始まりではないでしょうか。

 そんな節目に平成の時代を振り返ってみたいと思うところ、このコラムとして記すには掲載スペースの都合も勘案しなければなりません。
 そこで個人的な見解とお断りしつつ、この平成の間の大きな変化の一つとして、“社会・暮らしのデジタル化”を挙げてみることにします。平成元年の1989年、まだ小学生だった私にとって、暮らしはアナログ感に溢れていたことが思い返されます。たとえば、音楽を聴くにしても、当時はカセットテープが大活躍をしていました。現在、音楽ではデジタル配信が主流となり、まさに言葉そのままにデジタル化が進み、モノの影・形が薄らいできています。
 この30年間で、私たちは、ありとあらゆる分野でデジタル感満載の環境に囲まれて毎日を過ごすようになっています。ちょうど先日、本の販売金額に関するニュースが取り上げられていました。それは、紙の出版物の市場規模が1996年のピーク時に約2.7兆円あったものの、2018年にはその半分を割る約1.3兆円との見通しが出されたというものでした。このようなインパクトある実情は、あらためて、デジタル化がそのスピードを緩めることなく、着実に浸透し続けていることを教えてくれます。

 このデジタルライフといって過言でない私たちの暮らしにおいて、しばしば指摘されるように、人々の消費は“モノからコトへ”とシフトを加速させています。そこで登場してきていますシェアリングやサブスクリプションといったサービスは、人々が体験をはじめとする消費活動を行うための仕組みを新たに創り出していこうとするものです。
 こうした動きは、デジタル化の整備が進んできたことを背景に、次はそれらを活用した社会・暮らしの“デジタル的な手法化”が求められようとしていると言えるのではないでしょうか。
 たとえば、昨今、個人の行動履歴や健康状態などデジタル化された情報が、容易に獲得できるようになっています。そうした状況において、情報のコントロールを本人の手元に取り戻す、ひいては個人がみずから情報を預けたくなるような仕組みとして、2019年には「情報銀行」が事業者認定される予定となっています。

 オムロンでも、センシングデータが業界や企業を越えて自由に活用される世界を見据えて、前述のデジタル社会の動向と符号する取り組みを進めているところです。
 デジタル化を経て、社会・暮らしでのデジタル的な手法を存分に活かした新たなシーンづくりへの人々の期待が高まる今後を念頭に、HRIでは、生活者視点から未来社会像を描き、世に先駆けてそこでの社会的課題、その解決につながる新たな価値創造(=ソーシャルニーズの創造)に向け、知恵を絞る年にしていきたいと思いを強くしています。
 今年も一年、どうぞよろしくお願いいたします。
PAGE TOP