COLUMN

2020.07.01矢野 博司

些細な効果を丁寧に見出だす

 弊社では、3月終わりから、在宅勤務が始まり、7月からは、オフィスワークを基本としたwith コロナでの働き方になります。私は、実家に帰る機会を逃してしまい、3か月間、単独での在宅勤務でした。

 さてその在宅勤務の期間中、オフィスワークと比較して、成果の出し方、時間の使い方など様々な観点で議論されたと思います。
 例えば、通勤がなくなることによって、時間が生まれる効果についてはよく議論されていますが、元々通勤時間が有していた効果については、見過ごされがちです。私の場合、通勤は、プライベートから仕事、仕事からプライベートへの切替時間、日々の歩行(運動時間)、消費スタイル(流行り廃り)の変化を確認する時間、季節の変化を実感する時間、新聞や本、雑誌を読む時間、ダウンロードした音楽や動画を楽しむ時間など、様々な要素を含んだ時間でした。そのため、在宅勤務開始時には、それらの時間が消失したことにより、だらだらと仕事をしたり、太ったり、変化に鈍感になったり、読書時間が減ったりして、生活のリズムを失っていきました。

 また会議についても、在宅勤務になることで、会議室に参加者が集合して行うミーティングやコミュニケーションから、teamsやzoomなどのコミュニケーションツールを使用するようになりました。使用当初は、ハウリングや音が途切れるなどの回線上の問題から音声の聞き取りにくさが発生し、コミュニケーションがとりにくくなっていました。そこで、カメラを使わず音声だけで参加したり、発言する人以外は音声を切ってみたり、回線に負担をかけずに使用していました。そのような対策を講じることで、音声の聞き取りにくさは解消されましたが、コミュニケーションの本質である相互理解は進んだでしょうか?
 私の場合、会議室に参加者が集合して行うミーティングの場合、不明点が出た場合、プレゼンテーションを邪魔しない範囲で隣の参加者に「今の話って、**のこと?」とか、「**って略語は****の意味?」など小声やメモで確認し、互いに理解を促進していましたし、またプレゼンテーションする人は、参加者の微妙なひそひそ話や雰囲気を読み取り、プレゼンテーションの内容を変えたりすることで、参加者全体の理解を高める努力をしていたと言えます。ツールを使用することで、このような些細な効果は、見過ごされてしまい、相互理解ができにくい状態になってしまいました。

 つまり、元々通勤時間が有していた些細な機能や、参加者が物理的に集合する些細な効果について、見過ごされてしまったため、機能や効果が失われてしまい、徐々にそれらが蓄積し、身体・精神的にも、状況理解的にも、ダメージを受けてしまったのではないでしょうか。
 そこで、今までと、現在の状況とを丁寧に見ていくことで、見過ごされがちな些細な機能や効果を見出し、オルタナティブを見つけ、その時間を確保し、実行することで、ダメージを回復させていきました。
 通勤時間のオルタナティブとして、朝夕の散歩による季節の実感、様々なジャンルのウェビナーの参加による知識獲得などを通して、生活のリズムを戻し、会議においては、アイスブレイク、会議におけるチャットなどを通して、会議の理解を高めていきました。

 今後、withコロナによる様々な働き方が出てきますが、まったく新しいものではなく、今まで見過ごしていたような些細な機能や効果が、形を変えて出てくるのではないかと感じています。
 今までの自分自身の過ごし方を些細なことから洗い出し、丁寧に考えることが、withコロナの生活様式を考えるきっかけになると感じています。
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