COLUMN

2021.11.03田口 智博

持続可能性をコロナ禍から再考する

 コロナ禍で都道府県各地に出されていた「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が、全面的に解除されてから1ヵ月が過ぎようとしています。新型コロナの感染拡大は、再びやって来るのか。それとも、このまま小康状態を保てるのか。いずれにしても気になる点です。
 AI分析によると、来月12月から再びコロナ感染は拡大し、年を越えて1月中旬ごろに第6波のピークを迎える事態がどうやら見込まれているそうです。そんな予測結果を聞くと、これまでと変わらず感染対策の徹底に向けて、油断することなく気を引き締めなければなりません。

 AIによるシミュレーション予測然り、スマホの欠かせない生活様式にみられるように、私たちは科学技術が進化した社会で、豊かさと利便性の恩恵を受けていることを日々実感します。一方、今回のコロナ禍のように、現在の科学技術をもってしても、その対策は先回りできず、私たちはその場凌ぎの不安と混迷を極める事態に直面しています。こうした状況は、いくら進化の目覚ましい科学技術といえども、社会をより良く、持続可能な姿にしていくには、それだけでは立ち行かないことを如実に示しています。

 今年8月に、インフォバーン社が主催する「GREEN SHIFT」(*1)という未来社会の探索と再生型イノベーション創出を目指す、ラーニング&コミュニティ活動の1stシーズンに参加する機会がありました。
 この企画を進められていた(株)インフォバーン代表取締役会長の小林弘人さんとのお話において、気候変動や新型コロナの問題から、「もっと自然に耳を傾け、自然からの学びを通して、社会そして地球をより良くしていくアクションをとる」ことを考えていく必要性への言及がありました。そのため、「GREEN SHIFT」では、企業を中心に、社会として取り組むべき行動の“シフト”として、1stシーズン「サーキュラーエコノミー」、2ndシーズン「生物多様性」をテーマに掲げていると言います。

 国外の企業活動に目を向けると、既にアメリカでは、「パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)」という、明確な社会目的を最優先とする法人格を有するべく、既存企業や新興企業が認証を取得する動きが顕著になっているそうです。そこでは、企業活動の優先事項が、これまでの株主利益から、環境や社会をはじめステークホルダーの利益へとはっきりと変わってきています。小林さんは、「こうした動きが、アメリカから起こっていることに注目すべき」。「資本主義経済の中で成し遂げるべきことが、持続可能性であるという意識変化の現れでもある」と指摘します。
 企業活動が、こうした持続可能、さらには環境再生(リジェネラティブ)という志向のもとで展開されれば、それはおのずと循環型の経済がベースとなり、生態系の保全と利用が社会経済活動に組み込まれていくはずです。

 ちょうど最近、2013年発刊の『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』(*2)という書籍を手に取りました。その中では、次のような一節が記されていました。

~“技術を発揮できる自然の環境がなくなってしまえば、それですべてが終わり。技術をつなぐだけではなく、受け継いだ技術を発揮するための自然もあわせてつないでいく、そこまで含めて持続可能な経済をつくっていかなければならない”~

 コロナ禍をきっかけに、科学技術と自然、そして私たちの人間活動の関わり方を見直して、進化させた社会づくりをひとり一人が考えていく、そんなタイミングでもあるのではないでしょうか。
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